ISDNの干渉
ADSLは、既設の電話線に音声帯域(〜3.4Kbps)より高域の信号を乗せて高速通信を実現しているが、電話線はケーブルの心線を撚って対策をしているとはいえ、外部からのノイズ等の影響を受けやすい。ADSLの最大の敵は、同じ電話線を使用しているISDNである。悪いことにADSLとISDNは使用している帯域も重なっているため、電話局から家庭までのケーブル内で影響を受けることになる。
日本のISDNは、2.5msの間に上りと下りを交互に伝送するピンポン伝送方式を採用しているため、信号の伝送方向が1.25ms毎に切り替わる。イー・アクセスが提供する8Mサービスでは、G.dmt(G.992.1
AnnexC)方式を採用している。この方式では、ISDNとの干渉を最小限に押さえるため、ISDNの伝送と同期をとってADSL信号の伝送を調整している。
NTT側からISDN信号が送信される時(下り信号)、近端漏話(NEXT:Near End CrossTalk)により局側で強い干渉を受けるが、ADSLの下り信号も大きいため影響をあまり受けず、多くの信号を送ることができる。(家庭側は遠端漏話。FEXT:Far End CrossTalk)
これに対して、ADSLの上り信号は、NTTに信号が到達したときケーブルのロスにより信号が減衰しているため、ISDN信号の影響を受け、NTT側で受信しにくくなる。従って、この周期では伝送する情報を押さえ、エラーの発生を防止している。(上り信号は周波数が低いため、あまりISDNの影響は受けない)
一方、家庭側からISDN信号が送信される時(上り信号)、上記とは全く逆になり、ADSLの上り信号はあまり影響を受けないため多くの信号を送信できるが、下り信号は家庭にくるまでに減衰するため、ISDNの強い信号の影響を受け伝送する情報を押さえざるを得なくなる。
従って、ADSLモデムのトーン情報は、ISDNの影響を受けていない場合は、FEXT時のBitMapとNEXT時のBitMapの両方ともになだらかな丘状態になるのに対して、ISDNの影響を受けている場合は、FEXT時のBitMapはなだらかな丘状態になるものの、NEXT時のBitMapに大きな谷ができるようなグラフになる。おやじのグラフはその典型であり、しかもかなり強い影響を受けているグラフである。影響が軽微なら少し落ち込む程度の谷になるだけですむ。
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