トーン情報とは、ADSL信号の伝送状態をグラフで表したものである。(詳細はこちらを参照)
NTTからの距離も近く、ノイズの影響をほとんど受けていない理想的なグラフは、以下のようにFEXTとNEXTがほぼ同じ形で、頂上が平坦な丘のようになる。
これに対して、おやじ宅で取得してみたトーン情報を見て愕然とした。
このグラフからわかるのは、次の3点である。
1. 外来ノイズ、特にAM放送の影響はない。
8Mサービスでは、AM放送と同じ帯域を使用しているためその影響が問題になっているが、おやじ宅は全く影響を受けていない。おやじ宅は、埋立地に造られた3000世帯を超える大規模マンション街にあり、この街に電柱は全くない。これだけの世帯分のケーブルは電柱設置は不可能なため、NTTからのケーブルは全て地下埋設になっているはずであり、外来ノイズを受けにくい環境にある。現によく見られるNHK第一(137番)、NHK第二(161番)の落ち込みがない。
2. ISDNの強い干渉を受けている(ISDNの干渉についてはこちら)
FEXTが若干デコボコしたり、ビット数が少なくなっているが、全域に渡ってサブキャリアがあるのに対して、NEXTの下りのサブキャリアは136番から154番に少しあるだけでほとんどない他、ビット数も非常に少ない。これは何を意味しているのか?これは、典型的なISDNによる干渉と思われる。日本のISDNは2.5msの間に上りと下りを交互に伝送するピンポン伝送方式を採用しているため、FEXTとNEXTが1.25msごとに切り替わる。NEXTだけキャリアがほとんどないということは、非常に強いISDNの干渉を受け、家庭側のISDN端末が送信する周期では、ほとんど送信できない状態になっていることを意味している。90番から135番まで全くサブキャリアがないが、ISDNの弱い干渉ならこの領域は軽い谷になるだけですむはずである。
現在、ISP経由で回線調査を依頼しているが、仮に隣接カッドにISDNが収容されていた場合、大いに悩むことになるだろう。何しろ収容替えには、
○回線調整基本工事費:13,000円(工事を行なう場合必ず必要)
○回線調整(収容替):9,000円(1工事につきの料金)
の、計22,000円もかかるので、収容替えの結果が良ければいいが、駄目だった場合のことを考えると躊躇せざるを得ない。また、使用しているケーブルに依存していることも考えられる。距離の大半を占めるNTTからマンションのMDFまでは、新しい街なので恐らくPECケーブルといわれるNTT仕様のツイスト(カッド)ケーブルが使われているはずである。ここで干渉しているのであれば、FEXT側にも同様の傾向が現れるが、ほとんど影響を受けている様子はない。従って、おやじ宅は、MDFから建物内での干渉が大いに考えられる。ここに、撚り(ツイスト)が浅いケーブルか、家庭内でよく使われている単線の平行ケーブルが使用されているのではないかと思われる。こんなケーブルでは、上下階でISDNを利用していたらひとたまりもない。自分ではどうしようもないため、あきらめるしかない・・・・・・(>_<)。
一方、義兄のところのトーン情報は、まさにNTTまでのケーブルで干渉している例と思われる。義兄宅は一戸建てであり、NTTまでの距離も道なりで1.6Kmと近いが、ISDNとAM放送の影響をもろに受けており、思ったほど速度が出ていない典型的なグラフである。
3. 帯域調整されている
高域は、NTTまでの距離が長いケーブルのロスにより減少するのは止むを得ないが、178番から255番サブキャリアまでの高域が全くない。帯域調整していなければ、デコボコすることはあっても、全く無いということは考えられない。既に開通時に帯域を調整されているようだ。現状でも、何も対策しないと回線がかなりの頻度で切れるので、ぎりぎりのところに調整した結果と思われる。下りは33番から255番までなので、約3割のキャリアは使えないことになる。帯域にして約3Mbps弱は既に使えないとは、残念・・・・。
おやじ宅は、道なりで2.4Kmとロスに関してはあまり環境はよくないが、収容替えを行いマンション内の配線さえしっかりしていれば、帯域調整をやめれられ、e-Accessの実験結果からすると、恐らく倍以上の速度(3〜4Mbps)で接続できると思われる。とりあえずマンションのMDFのところで、是非接続してみたいものである。